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「河童の詫び証文」というお話
| 河童の詫び証文『小泉八雲の怪談づくし』小泉凡 監修・解説 八雲会 より |
松江から二.五キロばかり行った川津村に、河子(かわこ)の宮という河童の宮があります。
この小さな社に、河童が判を押したといわれる証文が残っています。
むかし、川津川に住んでいた河童が、その村の住人や家畜をたくさん捕まえては喰い荒らしていました。
ところがある日のこと、水を飲もうと川へ降りた馬をつかまえようとして、どうしたはずみか、
河童は馬の腹帯へ頭を突っ込んでしまったのです。
馬は驚いて川から飛び出して、河童を畑へ引きずっていきました。
そして馬の持ち主と大勢の百姓が、河童を捕まえて縛り上げました。
村中の人が化け物見物に集まってくると、河童は地面に頭をつけて、声に出して許しを乞いました。
百姓たちはすぐにでも化け物を殺してしまいたかったのですが、馬の持主がたまたま村長だったので、
「今後、川津村の人間や動物にはもう二度と手を出さないという誓いをさせた方がよいだろう」ということになり、
そこで証文を書いて、河童に読んで聞かせました。河童は字が書けないので、手のひらに墨を塗って、
証文の下に手判を押させて河童を逃がしてやりました。
それからのちは、川津村が河童に襲われることはなくなったということです。
