雪女というお話
| 雪女『小泉八雲の怪談づくし』小泉凡 監修・解説 八雲会 より |
武蔵の国の樵、茂作と巳之吉は、ある日山からの帰りに吹雪に遭い、
大きな川の渡し場にある小屋で一晩過ごすことにしました。
夜中に巳之吉が目を覚ますと、小屋の中には、雪明かりに照らされて白い着物を着た女がいるのが見えました。
女は、茂作の上にかかみこんで、真っ白い煙のような息を吹きかけていました。
その女の目は恐ろしいけれど、たいそう美しい。
女は巳之吉に向かって「お前はまだ若い。憐れになったので、今度は助けてあげよう。
しかし、今夜見たことをしゃべったら命はないものと思うがよい」と言うと、小屋から出ていきました。
茂作は、冷たくなって死んでいました。
翌年の冬のある夕方、巳之吉は背が高く、ほっそりした美しい娘に会いました。
娘の名はお雪といい、江戸へ向かう途中だと言います。
巳之吉は、しばらく家で休んでいったらどうかと誘い、母と暮らす家へ連れて帰りました。
その後、お雪は巳之吉の嫁になり、十人の子どもをもうけました。
ある夜、子どもたちが寝ついてから、巳之吉はお雪に、あの吹雪の夜の出来事を話し始めました。
すると、お雪は急に立ち上がると、巳之吉の上に腰をかがめ、
「それは私だよ。一言でもしゃべったら、命はないと言ってあったはず。
でも子どもたちが不憫でお前を殺すことはできない。
この子たちをいじめるようなことがあれば容赦はしません」と言うと、
溶けて輝く白い霧となって消えてしまいそれきり見ることはありませんでした。

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